一般社団法人
日本・オマーン協会
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事業報告 一般社団法人に衣替えして4年目となる日本・オマーン協会は、平成28年度から新しい企画「政治・経済講座」を開設した。広く自由参加を呼びかける「年間6回開催の市民講座」に加えて、法人会員を対象にした会費制の昼食会と懇談会を兼ねた場を設けることで、協会活動の充実を図るものである。初回となる講座は、6月27日(月)正午から14時まで神田の学士会館で行われ、法人会員11社13名、講師として外務省の上村 司 中東アフリカ局長、また、日経新聞社の中西 俊裕 編集委員及び理事長ほか理事、事務局合わせて合計21名が出席した。 冒頭挨拶で大森理事長は、「GCCや中東との異文化交流をさらに深めるためには、もっとコミュニケーションをとる必要がある。協会役員や法人会員相互のネットワークづくりに取り組み、ビジネスにおいても役立つような話が聞ける講座を目指します」と、その志と意気込みを表明し、昼食会と懇談会は終始和やかな雰囲気の中行われた。 食後、まず外務省の上村 司 中東アフリカ局長から、1時間ほど中東情勢についてお話を伺った。その概要は次のとおり。 21世紀に入り中東は正に危機的な状況にある。アフガン戦争、イラク湾岸戦争、アラブの春と混迷は深まり、シリア、リビア、イエメンなどでは泥沼のような戦争が続き、今なお毎日多くの人が犠牲となっている。 こうした国や地域の「戦乱の炎」は、それぞれ「根っこ」が違う。 リビアのカダフィイ独裁政権の崩壊後の混乱は、東・西・南と3か所に分かれている部族間の対立が基軸。国民統一政府の樹立は簡単にはいかないが、ある意味で単純な構図である。しかしこの混乱に乗じてISILが流れ込んでいるのは大きな懸念。またカダフィ時代の大量の兵器が周辺国に流出して危機が広がっている。 イエメン内戦もリビアに似た部族間の対立が引き起こしたものだが、スンニ派アラブの盟主サウジとシーア派のペルシャ・イランの対立が絡んでおり、やや複雑な構図となっている。 パレスチナ問題はパレスチナ国家の建設が主たる課題であり、本来国際社会が得意とする分野の問題であるが、エルサレムの地位をめぐる宗教的要素は難題で、解決に時間がかかっている。 いちばん厄介なのがISILである。190ヶ国からなる今の国際秩序に対する真っ向からの挑戦であり、宗教的な要素のみならず、部族間の相克や周辺国の思惑などが複雑に絡み合っている。解決が最も難しい現代の課題と言ってよいだろう。 この地域の紛争を解決するには、地域の大国同士の談合が鍵となる。特にサウジ・エジプト・イラン・トルコ、そしてイスラエルに注目すべきだ。 域内の王制国家(モロッコ・ヨルダン・オマーン等の産油国でない王制国家)が比較的に安定しているのは、大部族や勝者が「全部取り」するのを避けて、少数派や遅れた地域に目配りを欠かさず、拙速な民主化政策をとらないからである。こレらの国のあり方は、目下の中東危機を乗り切る一つのモデル、アイデアを提供している。 ついで日経新聞の中西俊裕編集委員が「地域の大国エジプト・イラン・トルコの人口はほぼ見合う。こうした宗派の同質性が高く比較的安定した国への支援を強化すべきだ」と発言し、質疑応答と懇談に移った。 参加者からは、「リビアの部族対立」「サウジの2030プラン」「オマーンとイランの関係」「イランのスナップバックの可能性」「中国は中東地域でどう動いているか」といった質問が出され、講師からさらに詳しい説明があり、混迷する中東情勢の現状を理解する上で極めて有益な懇談となった。 (文責:目魁 影老) |